美濃んちゅの酒場

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ホタルまつり

もう何年前になるだろうか。

恵那市に東野という地区がある。

市街地から少し外れたのどかな風景が広がるその土地に、夏の夕暮れ、私はいた。

その日、東野では「ホタル祭り」と呼ばれる夏祭りが開催されていた。

その名の通りホタルを愛でるお祭りなのだが、その年ホタルが少ないと噂になっていた。東野はホタルがよく飛ぶと昔から人づてに聞いていたが、一度もホタル祭りに行ったことがなかった私は、(ホタルが少ない年ではあったが)一度行ってみようと思い、夕方原付バイクにまたがって恵那市は東野へと向かった。

明智鉄道東野駅に着くと、夕暮れ時にもかかわらず子供からお年寄りまで多くにぎわっていた。浴衣に身を包む粋な若人から、無邪気に虫網を手に取る幼子に至るまで、こんな辺鄙な駅によくもまあ人が集まるものだと感心した。

日が落ち始めると、示し合わせたかごとく人々は次第に田んぼの畦道へと歩み始める。私も人々の流れに身を任せるがごとく畦道へと入っていった。

まだ薄明るい7時半、水路を流れる水の音が何とも言えぬ心地よさを提供する。前方を歩く子供たちは、バッタやらなんやらを捕まえてキャッキャとはしゃいでいた。

すると、遥か前方で男性が「飛び始めたぞ!!」と声をあげた。その瞬間、先ほどまで騒いでいた子供たちも静かになり、辺りは水の流れる音しか聞こえなくなった。

ほのかに草の陰から、「ぽー」っと黄色い明かりが空へと舞っていった。

「ホタルだ!!」

子供の声があがる。

その声に合わせるかの如く、草の陰から数十の光が一斉に月のない夜空へと舞い上がった。

後で知ったのだが、ホタルが飛ぶ時間には一夜に2度ピークがあるらしい。

1回目がちょうど日没後らしく、私は一度目のピークに立ち会うことができた。

いつまでもホタルの明かりに見とれていたかったのだが、後ろから別の子供たちが走ってきたので、彼らに場所を譲り、私は畦道を後にした。

原付バイクまで戻ると、自分のズボンに光がついていることに気が付いた。

私はその光を優しく持ち上げると、そっと空へと放した。

ヒグラシの鳴き声を聞くと、あの光を思い出す。