美濃んちゅの酒場

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少年の涙

少年時代、泣き虫だった私は半強制的に空手道場の門弟になった。親戚のおじさんが空手家と知り合いだったことから入門させられた。5歳の夏だった。

保育園でも男の子と遊ぶことができず、女の子とおままごとを楽しむ内気な少年にとって、空手道場へ通うことは拷問だった。

当時は鉄拳制裁が横行していた「古きよき時代」の生き残りのような兄弟子や先生がいたため、5歳から6歳に上がった頃の少年にも容赦ない鉄拳を喰らわされたものだった。

厳しい稽古に行くのが嫌で、稽古前なのに道着が涙でずぶ濡れになったこともあった。

ただ最終的にはちゃんと稽古に行った。

小学生に上がる頃には同年代の大会に出てそこそこ勝ち上がるくらいになった。

鉄拳を喰らいたくないがために真面目に稽古をしていたら、高学年になる頃には同流派の選手が集う大会で優勝するようになっていた。

泣き虫だった少年は、なぜか武道家になっていた。しかし、少年は闘いがあまり好きではなかった。痛いのは基本的に嫌いだった。

強くなるに従い、必然的に相手も強くなっていくのはどの世界でも良くある話で、いつしか少年の対戦相手は強い人ばかりになっていた。少年は闘いが好きでなかった。少年は大会に出たくはなかった。

 

いつの間にか泣き虫だった少年は青年になった。青年は武道家から足を洗い、一般生活を送っている。

稽古をしなくなった肉体は筋肉量が減り、かつての姿とは程遠い。

しかし、不思議なことに5歳から22歳まで空手・剣道と武道家として過ごしていた自分の心は未だに武道家のままだ。

 

かつて稽古がきつくて泣いていた私に師範が投げかけた言葉。

 

「己のために涙を流すな」

 

幼い僕には理解ができず、「泣いちゃダメなんだ~」と、とにかく泣かないようにして生きてきた。

でも大人になった今、心に刻まれたその言葉の意味が少しわかる気がする。

誰かのために流す涙。

それこそ本当の涙なのだと。