僕は卵かけご飯が好きだ。
昔家で鶏を飼っていたこともあり、幼い頃からよく卵かけご飯を食べていた。
殺菌も何もしていない卵を生で食べていたわけだから、多少のリスクもあったのだろうが、家の鶏が産んだ卵を生で食べてお腹がいたくなったことは僕の記憶上あまりない。
産みたての卵は温かく、わりと汚れていた記憶がある。しかしながらその汚れた卵を見つけるのが楽しみで、幼い僕はニワトリ小屋に通ったものだ。
産みたて卵の卵かけご飯、その響きだけでも十分美味しそうだが、僕はここに納豆を追加していた。
納豆と卵は一緒に食べると良くないといった話もよく聞くが、そんなこと幼い子供には馬耳東風。美味なる納豆卵かけご飯をよく食べていた。
子供の頃はよく食べていた卵かけご飯も、成長するにしたがいあまり食べなくなった。
そんな僕は先日久しぶりに朝ごはんに卵かけご飯を食べてみた。
口にいれた瞬間、あのとろっと口に入っていく卵かけごはんに、失っていた少年の輝きを見つけた。味覚と共に、実家の食事の風景が甦る。
ああ、なんておいしいのだろう。
僕はご飯粒の1粒にいたるまでを口に流し込み、そのままトイレへと駆け出したのだった。