美濃んちゅの酒場

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コロナ禍におけるアンケートの難しさ

世の中に新型コロナが蔓延して早いもので半年ほどたちます。人と人との接触が忌避され、「三密」という言葉もよく聞くようになりました。今年の流行語候補なのではないでしょうか。

新型コロナで深刻な影響が出ている業界は多くあります。旅行業や飲食業の問題は度々クローズアップされています。そんな中で、人知れず深刻な影響に悩まされている人々がいます。学生です。

私は既に学生の身分を失ったただの大人ですが、大学にいる後輩から時折相談を受けることがあります。学生がコロナで失ったものは非常に多く、彼らの心中を察すると涙が溢れだしそうになります。キャンパスの中で、「友情」「努力」「勝利」という週刊少年ジャンプのような学生時代を送ってきた(勝利したかは不明)私からすれば、キャンパスには入れず、研究資材を十分に活用できずに研究を余儀なくされている状況を何もできずに眺めているだけの無力な自分を恥じる他ありません。コロナの終息を祈り続けることしか私にはできないのです。

 

話はさておき、私はもともと人文地理学という学問分野出身です。当然大学にいる後輩も同じ学問分野に所属しています。彼らは「地域アイデンティティ」「観光」「社会影響」など多様なテーマを扱っており、これらのテーマの研究手法として「ヒアリング調査」や「アンケート調査」といったものが代表されます。

今回のコロナは、彼らの調査手法にも影響を与えているのです。

ヒアリング調査は、対象者に話を聞く文字通りの調査手法であります。ZoomやSkypeなどのウェブツールの発達によって直接現地で人と接触せずとも話ができるため、コロナの流行以降も一見問題なく使用できる調査手法に思えます。

しかし、ウェブツールを使用した手法は、当然ながら「聞き手」「語り手」どちらともが機器を使用できる環境にいる必要があります。農村調査等で高齢者の話を聞きたい場合など、テーマによっては難しい場面も多々あります。ただし、観光調査等で行政や業者の意見を聞き取りたい場合などは有効に活用できる手法であるかもしれません。テーマによってはコロナ禍においても有効な調査手法であるといえます。

しかし、聞き取り調査だけで卒業論文等を書くことはなかなか難しい面があります。聞き取り調査はあくまでも「個人(団体)の意見」を聞くものであり、若干客観性に欠く部分があります。そうした際に、客観性を持つデータを手軽に取得する手法として多く利用されるのが「アンケート調査」です。

私が学生の頃、ゼミ生の8割ほどがアンケート調査を行っていました。決してアンケートをやることを必ずしも勧めませんが、学生たちにとって(私たちにとっても)対象となる集団の意見を手軽に集めることができるのがアンケート調査なのです。そのためいつの時代もアンケート調査は学生に人気です。

そんなアンケート調査ですが、今年は学生たちにとってはかなり厳しいものになっているようです。アンケート調査には「Web」「対面」「郵送」「留め置き」などざっくりと分けてもいくつかの手法があります。私が学生だった頃人気だったのは、実際に現地で調査する「対面アンケート」でした。理由としてはいくつかありますが、対面アンケートにすることで、調査項目に漏れが出にくい点や現地の「生」の声をきけることが理由だと思います。逆に郵送や留め置きは回収率が悪い点、コストがかかる点からあまり人気は高くありませんでした。Web調査は近年グーグル等のサービスで手軽にできるようになり導入する学生も増えているものの、信頼性という面では他の調査に劣ります。当然モニターを使ったWeb調査もありますが、学生が使用するにはコストがかかりすぎてしまいます。

学生にとって、最も手軽な社会調査は現地での対面アンケートなのです。

ところが、コロナ禍において対面アンケートを避ける動きが多くみられます。私の母校でも、学生に対し対面アンケートは実施しないという方針が出されているようです。

感染のリスクを考えれば当然の動きかもしれません。実際に私のいる業界においても対面アンケートはかなり少なくなっています。私個人としては、対面アンケートは素晴らしい調査手法だと思っています(労力は掛かりますが)。特に学生さんたちにとっては貴重な経験になると信じています。

故に、コロナが憎い。

憎くて憎くてたまらない。

しかし、恨みつらみを言っていても仕方がありません。

コロナが流行る前から、対面アンケートの拒否率は年々上昇してきていました。対面に限りません。あらゆる調査において、拒否率は増加しているのです。理由の一つとして、一般人の個人情報への過剰(とまではいいませんが)ともいえる警戒、公的統計の不正問題等が挙げられます。

年々上がり続ける拒否率に、コロナの襲来で、アンケート調査は冬の時代を迎えるかもしれません。これをきっかけに、私たちはアンケート調査の新たなカタチを構築する必要があるのかもしれません。