美濃んちゅの酒場

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地域イメージについて

地域イメージ、学問分野ではよく社会学や地理学で扱われることが多いワードです。論文検索サイトであるCiNii Articlesで地域イメージで検索をかけると、200件を超える論文がヒットしました。同サイトで地域イメージと検索した際に確認できる最も古い論文は、1972年に書かれたものですが、地域イメージが活発に取り上げられるようになるのは2000年代に入ってからです。

 

地域イメージに注目が集まったのには様々な要因が考えられますが、今回私は地域イメージの論説の説明をするわけではないので割愛します。

 

地域イメージには2つの視点が存在すると考えられます。1つはその地域に住む人の視点、もう1つは外部の人からの視点。この両者が複雑にぶつかりながら、その地域にとっての地域イメージを作り上げよう、というのが昨今各自治体が策定している観光推進計画や観光まちづくりなどに現れてくると思います。

 

一般に上記の2つの視線は同一視されがちですが、実は両者は対立する視点です。その地域の人がその土地で暮らしていく過程で、ある種自然発生的に身につく地域と、外部の人がその土地に関して想起する地域では、驚くほどイメージする内容が異なります。

 

例えば「名古屋は魅力が少ない」というキーワードを聞いたことはありませんか?名古屋の魅力度は日本の都市部の中では群を抜いて低いらしいのです。その調査で名古屋は観光する場所が少ないとか、料理がまずいなど外の人には散々なことを言われていますが、その一方で名古屋に住む人は地元志向が非常に強いといわれています。

名古屋の人は名古屋が大好き、すなわち名古屋の人にとっての名古屋は住みやすい理想的な都市のイメージ、外部の人には魅力の少ない大いなる田舎のイメージ、というように中と外ではまったく異なる地域イメージが生まれるのです。

 

同じ外部の人でも、おそらく関東や東北の人が抱く名古屋のイメージと岐阜や三重の人が抱く名古屋のイメージはこれもまた異なるでしょう。地域イメージは非常に曖昧なものなのですが、地域イメージは今非常に重要視されています。特に観光においては、地域イメージがそのまま集客に影響するため、各地方自治体は必死に魅力的な地域イメージの形成に躍起になっています。それが良いことか悪いことかは賛否両論でしょうが、外部のイメージUPを目指しすぎるあまり、内部の視点をおろそかにするのはあまりよろしくないのかもしれませんね。

 

地域イメージを各自治体が押し出したい際は、この内部と外部という2つのフレームが重なりあう範囲を重要視する必要があります。当然内・外部それぞれの重ならない範囲(内部の場合は地域住民独自のイメージ、外部の場合は地域住民が気づいていないイメージ)も重要であります。欲を言えばすべてを取り入れることが理想なのですが、あまりにもイメージが多すぎると雑多になって、結果として自治体が作り上げたい地域イメージの形成の阻害となってしまいます。そのため、両者のフレームが重なり合う範囲を重点的に押し出すことで、一つの明確な地域イメージを押し出すことができます。

 

それが結果として、外部の人にとっては観光に活かせ、内部の人にとっては郷土愛の象徴となり、自治体はウハウハになります。

 

と、ここまで私は自治体が大手をふって地域イメージを形成し、それを押し出すことについて、賛成っぽい立場で話してきましたが、本当のところはやや反対です。しかし、致し方ないのかな、とも考えています。

 

そもそも現在多くの自治体は明治・昭和・平成の大合併により統合された、元来別の文化を持っていた集団を政治的に統合したものになっています。もともとはよそ者だったもの同士が、形式的に同じ「内部」の集団としてくくられているのが現在の多くの自治体です。つまり内部といいつつ、その中を見るとさらに細かい内部と外部が混在しているのです。

ところが、最近は少子高齢化に伴う文化の継承の断絶や、生活様式の変化に伴って、かつてあったはずの地区ごとの地域イメージも希薄なものとなっており、それぞれの自治体は都市化によってチェーン店が立ち並ぶ均質的な空間となり、独自のイメージが消滅しかけている場所が多くあります。

 

集団を統治する側からすれば、一つの象徴を作り上げることで、内部の結束を固めるというのは古来から繰り返されてきた当然の思想です。かつてそれは、全国均一なサービスを提供できる「都市のような街」という旗印のもと行われてきました。しかし均一になったことにより、人々は特異性を求めて観光を行うようになり、近年は観光が主要な産業であるという考えが全国に広まっています。

 

均一化したまちづくりを目指して行ったかつての施策により、地縁組織が希薄となった今、かつてあった地区単位の地域イメージは崩壊寸前となっているのに、観光においては希薄になった地域イメージこそが最も重要であるということに多くの自治体が気づき始めたのです。そう、自治体を統合する象徴としての他の自治体とは異なる地域イメージが今必要とされているのです。

 

かつて細かい単位で存在していた地域イメージ。それは今や希薄なものとなっており、外部にアピールするためのイメージつくりのために、各地の自治体はかつての内部イメージを掘り起こして新たに地域イメージを作り上げようとしています。今自治体が行っている地域イメージづくり(ゆるきゃらなど)は、内部のイメージを組み込みながらも、最終的には外部向けの地域イメージになっています。

 

私はそれがあまり美しい行動ではないと思ってしまうのです。

とはいえ、そういった地域イメージを参考に観光地を選んでいるので、私は全面的に地域イメージを自治体が作り出すことに大手を振って反対することはないのです。